MESのオンプレミス型・クラウド型それぞれの特徴を解説
MES(Manufacturing Execution System)は、製造業の効率化を支える製造実行システムです。このMESですが、オンプレミス型とクラウド型の2種類があり、それぞれに特徴があります。本記事では、MESの型の違いによるポイントや、MESを選ぶ際に気を付けたいところを解説します。ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
オンプレミス型の特徴
オンプレミス型のMESは、ユーザーが自らサーバやその他のハードウェア、および各種ソフトウェアを所有し、それを基盤として構築するシステムです。このアプローチは、高度なカスタマイズの自由度と強固なセキュリティ性を提供する点で評価されています。
各ユーザーが自分のサーバにMESをインストールし、運用していくため、それぞれのニーズに応じた柔軟なカスタマイズが可能です。これにより、特定の業務プロセスや製造現場の要件に精密に適応したシステムを構築できます。
しかし、オンプレミス型のMESにはいくつかの課題もあります。まず、システムのバージョンアップは各ユーザーが個別に対応しなければならず、そのための時間と労力が必要です。さらに、システムの運用を支えるための専門スタッフの確保や保守コストの管理も求められます。とくに大規模なシステムの場合、これらのコストが大きな負担となる可能性があります。
また、初期導入時に必要となる機器の購入費用が高額であるため、初期投資が大きくなる傾向が多いです。一方、オンプレミス型のMESは、クラウドベースのシステムと比較して、データの安全性が高いとされています。
すべてのデータがユーザーの管理下にあるため、外部からの攻撃やデータ漏洩のリスクを低減することが可能です。特に機密情報を多く取り扱う製造業では、この点が大きな利点となります。
クラウド型の特徴
クラウド型のMESは、ベンダーが所有するサーバーにインストールされたシステムを利用する形式です。このモデルでは、自社でサーバーを購入・設置する必要がないため、初期導入時のコストを大幅に削減できます。
また、クラウド型のMESは常にベンダーによって管理・更新されているため、ユーザーは最新のバージョンを常に利用可能です。これにより、システムの機能やセキュリティが最新の状態に保たれ、技術の進歩や市場の変化に迅速に対応できます。
クラウド型MESのもう一つの大きな特徴は、サブスクリプションモデルでの料金体系です。多くの場合、定額の利用料金が設定されており、利用期間に応じて費用が発生します。これにより、初期投資を抑えつつ、必要に応じて柔軟にシステムを利用可能です。
そのため、中小企業や導入コストを抑えたい企業にとっては非常に魅力的な選択肢となるでしょう。しかし、クラウド型MESは特にセキュリティ面での懸念がよく指摘されます。
クラウド型の場合、データの保管やセキュリティ対策は主にベンダーの責任となるため、自社で完全にコントロールすることが難しくなります。そのため、ベンダーが提供するセキュリティ対策の信頼性を十分に確認し、情報漏洩や外部からの攻撃に対するリスク管理が重要となります。
また、業界や取り扱うデータの性質によっては、クラウド上にデータを保管すること自体が法規制や社内ポリシーに抵触する場合もあります。さらに、クラウド型のMESはインターネット接続が不可欠であるため、ネットワークの品質や安定性もシステムのパフォーマンスに直結します。
接続障害が発生した場合、システムの利用が一時的に困難になる可能性があり、業務に支障をきたすリスクも考慮する必要があります。
MESを選ぶ際に気を付けたいポイント
MESを選ぶ際には、システムとベンダーに関する6つの重要な比較ポイントがあります。
既存設備への対応が可能か
MESシステムは工場内のラインや設備から情報を収集し、データベースに蓄積して品質の維持・向上に役立てます。しかし、工場内には旧式の設備や異なるデータ形式のものも存在するため、検討中のMESシステムがこれらの設備からデータを収集できるか確認することが重要です。
自社がやりたいことができるか
システム導入の目的が明確であっても、それを実現する機能が搭載されていなければ意味がありません。やりたいことを実行できる機能があるか確認することが重要です。
使い方は難しくないか
高性能なMESシステムを導入しても、現場で使いこなせなければ効果は半減します。機能性だけでなく操作性にも注目し、直感的に操作できるか、現場の誰もが容易に使えるかを確認することが重要です。
「製造」「設備」「ネットワーク」に関する知識・MES開発経験は豊富か
ベンダーを選ぶ際は、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークに関する知識があり、MESの開発経験が豊富な会社を選ぶべきです。これらの知識が豊富な会社は、多様な業界・業種、規模の企業へのサポートで培ったノウハウを持っています。これにより、クライアント企業に合った柔軟なシステムの開発が可能です。
納期はどのくらいか
納期はカスタマイズ内容によって異なります。同じ内容でもベンダーによって差があり、カスタマイズありのMESの場合、通常は3ヵ月~1年以内に納品されます。しかし、フルスクラッチの場合は2~3年かかることもあるため、事前に納期を確認することが重要です。
サポート体制は充実しているか
ベンダーからシステムやソフトウェアの操作説明、操作指導といった導入支援サービスが受けられると、システムの定着が早まります。とくにITリテラシーの低い製造現場への導入では、ベンダーによるサポートの質がシステムの定着性を左右します。
まとめ
MESにはオンプレミス型とクラウド型があり、それぞれに異なる特徴とメリットがあります。オンプレミス型はカスタマイズ性とセキュリティ性が高い一方、初期投資と保守コストが大きいです。クラウド型は初期費用を抑え、常に最新のシステムを利用できる反面、セキュリティ面でのリスクとネットワーク依存性があります。MES選びでは、既存設備対応、自社のニーズへの適合、操作性、ベンダーの経験、納期、サポート体制の6つのポイントを重視しましょう。