国内回帰が増えている?国内回帰する企業が増加した理由と課題について
現在の世界情勢を客観的に見てみると不安定な状況が続いています。それにより生産ラインがストップすることが充分に考えられます。また、新興国の所得が上昇していることもあり、人件費の負担が増えるようになりました。このようなことから国内回帰していますが、その場合のデメリットも存在します。
いま生産の国内回帰が増えている
これまでは海外に工場を建設して、現地の人材を活用して製品を生産していましたが、昨今の状況により現在の状況を見直さざるを得なくなりました。
生産の国内回帰とは
海外の工場を日本に戻すことを指します。これまでは積極的に工場を海外に進出させていましたが、これからは国内に工場を建設するようになります。国内と海外の工場を操業するのではなく、海外の工場は閉鎖することになるので、製品を輸出する必要がなくなります。
海外に工場を建設するメリット
まず、中国やタイなどの国に工場を建設すると、日本よりも人件費が安いので企業は費用を抑えられます。日本に工場を建設すると、同じ生産量でも人件費が高いので利益が少なくなってしまいます。
次に、海外のほうが土地は広いので、広い工場を立てやすいのがメリットです。また、海外の現地の人に製品を販売するときは、日本に製品を輸出するときのようにコストが発生しないので利益が増えます。このような観点から海外に工場を建設していました。
海外に工場を建設するデメリット
半永久的に海外に工場を建設するほうがメリットであるとはいえません。なぜなら、海外は日本のように治安が安定しているわけではないからです。暴動が発生すると、生産ラインがストップして日本に製品や部品を輸出できなくなります。そのような状況が発生すると、日本の顧客が必要な製品や部品を購入できなくなります。
また、日本の企業の中には海外からの部品が輸入できないことにより、製品が製造できなくて困ってしまうこともあります。その結果、企業の利益が減少して経営が厳しくなります。そして、感染症などにより生産ラインがストップしてしまうこともデメリットです。これらのことから、海外に工場を建設するメリットよりもデメリットのほうが上回ってしまったので、国内回帰が増加しています。
なぜ国内回帰が増えているのか
不安定要素を排除するために、国内回帰が増えています。外部環境の影響を極力受けないようにしています。
感染症の影響
感染症の影響により、国同士の流通が制限されました。それにより、製品の納期が遅れてしまい、製品を必要としている企業や消費者に行き渡りにくくなりました。国内に工場を設けていれば、このようなリスクを回避できます。
新興国の所得が上昇している
これまでの中国やタイなどの国の所得はそこまで高くありませんでした。しかし、新興国を中心に所得が上昇しているので、中国やタイなどの国に工場を建設すると、日本に工場を建設するときの費用と大きな差が生まれなくなってきました。これは製造業に限らずオフショア開発も同様で、中国やタイの人材ではなく、インドネシアやフィリピンの人材を採用するようにしています。
単位労働コストの逆転
海外の人件費の高騰により、海外に工場を建設するメリットがなくなってきました。状況にもよりますが、海外に工場を建設するほうが費用は発生する可能性もあります。日本の賃金は上昇しませんが、海外の賃金は上昇しているのでこのようになっています。
国内回帰で発生する課題と解決方法
海外に工場を建設するデメリットがありますが、国内に工場を建設するデメリットも存在します。日本の人口減少は避けられないので、人材不足の課題は消えないでしょう。
深刻な人材不足
製造業は深刻な人材不足を抱えています。そのため、人材を確保しようと思っても難しいのが現状でしょう。
国内の工場用地の不足
海外とは異なり、日本で広い土地を確保するのは難しいのが現状です。また、新たに工場を建設するためのコストもかかります。そのため、すぐに工場を建設するのではなく、慎重に検討することになりそうです。
業務の効率化と自動化
IT技術を導入して、作業動線を短くすることや人数を減らして作業することも可能になります。これにより、人的ミスも防げるようになるので仕事がスムーズに進行するでしょう。
デジタル化
人員はミスしますが、機械やAIはミスしません。デジタル化は作業を効率化するだけではなく、多少人員が減少した場合でも対応できるようになります。製造業は正常に稼働させることが大切なので、機械を上手に活用しましょう。また、品質も一定になるので不良品の発生率も低下します。マニュアルを作成して人員に徹底する必要もありません。
まとめ
国内回帰の動きが活発になっていますが、深刻な課題を日本は抱えています。日本の人口減少と工場用地の不足は現実的な課題なので、これらを解決するための方法を考えていかなくてはいけません。それには、工場のデジタル化やDXを視野に入れた対策を講じる必要があります。人口が多い国のように人海戦術で製品を製造できるわけではないので、人員を削減しつつ効率的に作業するためにもMESの利用を検討しましょう。