MES（製造実行システム）を導入する際、まず検討すべきなのが「クラウド型」と「オンプレミス型」のどちらを選ぶかという点です。すぐに始められてコストも抑えやすいクラウド型と、自由度が高く自社に最適化しやすいオンプレミス型は、それぞれに異なる特長があります。本記事では、両者の特徴と違いについて詳しく紹介します。

MES（製造実行システム）とは？工場の現場力を高める仕組み

生産の現場を効率化したいと思ったとき、注目されるのが「MES（製造実行システム）」です。名前は聞いたことがあっても、具体的にどんなことができるのかは意外と知られていません。以下では、MESの役割や機能を紹介します。

製造現場を見える化

MESの主な役割は、工場内で行われている製造作業をリアルタイムで「見える化」し、生産活動を最適な形に整えることです。作業の進行状況や設備の稼働状態、作業者の動きなどを一元管理することで、現場の状況を正確に把握できます。

また、紙や手作業での管理をシステム化することで、ヒューマンエラーの防止にもつながります。結果として、生産のムダを減らし、コスト削減・品質向上・納期短縮の3つの効果が期待できるのです。

MESが支える工場の現場業務とは？

MESは、工場の「今」をリアルタイムで管理するシステムです。生産指示を現場に届けるだけでなく、材料の使用状況や在庫の動き、機械の稼働データやメンテナンスの記録、さらには品質管理に関する情報まで幅広くカバーしています。

こうしたさまざまな情報をMESで一元的に収集・分析することで、現場の判断スピードが上がり、ムダのないスムーズな生産活動が実現します。製造現場のあらゆる工程において、MESは効率化と品質向上のカギとなる存在です。

MES（製造実行システム）の種類！クラウド型とオンプレミス型の違い

MES（製造実行システム）には、前述した通り大きく分けてクラウド型とオンプレミス型の2つの導入形態があります。ここでは、両者の違いやメリットについて紹介します。

すぐに始めたいならクラウド型MESが便利

クラウド型のMESは、インターネット環境さえあればすぐに使えるのが魅力です。自社でサーバーや専門的な設備を用意する必要がなく、初期費用を抑えやすいのも大きなメリットです。

導入に時間がかからないため、短期間で効果を試したい企業にも適しています。また、ソフトウェアの更新はベンダーが自動で行ってくれるため、自社でのメンテナンスが不要で、常に最新の機能が利用できます。スモールスタートやテスト導入を考える企業にとって、使いやすい選択肢です。

柔軟に使いこなすならオンプレミス型MESが安心

オンプレミス型MESは、自社内にサーバーを設置して運用する方法です。初期の構築には時間やコストがかかりますが、その分自社の業務フローや既存システムに合わせて自由にカスタマイズできるのが強みです。

たとえば、他の業務システムとの連携や、特定の管理項目の追加なども柔軟に対応できます。事業の拡大に合わせて機能を追加することもできるため、長期的にしっかり活用したい企業や、大規模な製造現場にとくに適しています。

MES導入で失敗しないために！押さえておきたい注意ポイント

製造現場の見える化や効率化を実現するMES（製造実行システム）は、多くの企業にとって強力な武器になります。ここでは、MES導入時にとくに気をつけたいポイントを3つに絞って紹介します。

自社の製造プロセスに合ったMESを選ぼう

MESにはさまざまな機能がありますが、すべての機能が自社に必要とは限りません。重要なのは、自社の製造フローや管理体制に合ったシステムを選ぶことです。

たとえば、工程数が多いラインでは進捗管理機能が重要になりますし、多品種少量生産が中心の企業では柔軟な指示・変更対応機能が求められます。現場の実態と照らし合わせながら、必要な機能を見極めて選定することが、スムーズな運用と効果的な活用につながります。

MESを使いこなすための人材育成が大切

どんなに高性能なMESでも、それを使いこなす人がいなければ意味がありません。MESは操作や管理が複雑なシステムであるため、導入時には担当者や現場スタッフに対してていねいなトレーニングが必要です。

とくに初めてMESに触れる人にとっては、操作方法だけでなく、データの見方や活用方法まで理解を深める必要があります。継続的な教育体制を整えておくことで、システムの定着と活用の質を高められます。

MESは全社的な協力体制で進めよう

MESは製造現場だけのものではなく、品質管理、在庫管理、経営管理など多くの部門と関わりを持つシステムです。そのため、導入にあたっては部門を超えた連携と合意形成が欠かせません。

もし一部の部署だけで導入を進めてしまうと、他部門との情報共有に齟齬が生じたり、システム運用がうまく機能しなかったりすることがあります。導入前の段階で、関係者全体で目的と役割を共有し、協力体制を築いておきましょう。

まとめ

MES（製造実行システム）は、製造現場の「見える化」や生産の最適化を実現するための重要な仕組みです。導入にあたっては、自社に合ったクラウド型またはオンプレミス型を選ぶこと、社内の業務に適合する設計、そして人材育成や部門間の連携など、事前の準備と社内体制の構築が不可欠です。MESは導入すればすぐに効果が出るものではなく、継続的な運用と改善が求められます。自社に最適な形で導入し、最大限に活用していきましょう。