MESを狙ってサイバー攻撃されるかも!どんな影響を受ける可能性がある?
製造業では、人手不足や若い人材の育成、消費者ニーズの多様化、といったさまざまな問題が存在しています。そのような状況下で、日本でもIoTなどの先端技術を活用した「スマート工場化」を進める工場が増えています。しかし、メリットもある一方でサイバー攻撃のリスクにも注意が必要です。重要な役割を担う「MES」に注目しながら、解説します。
工場におけるMESの役割
「MES」は「ManufacturingExecutionSystem」の略で、製造実行システムのことを指します。生産ラインの各製造工程と連携できるMESを導入することで、製造業に必要な徹底的なコスト管理と「ヒト・モノ・時間」といった、生産資源の効率的な活用が可能となります。
作業者のスキルを可視化することもでき、生産性の向上も期待できます。アメリカのMES推進団体であるMESAは、MESの機能を以下の11項目で定義しています。製造する製品によってMESの必要な機能が異なるため、11項目の中から必要な機能を組み合わせて利用するのが一般的です。
生産資源の配分と監視
生産資源を把握・管理し、予約・配分する機能です。対象となる生産資源は、装置や工具、人や技能、そのほか設備や文書など、生産活動に必要なものを意味します。
仕様・文書管理
作業に必要となる文書を管理する機能です。作業指示書や図面、レシピや仕様書、などがあります。蓄積や編集、製造記録の管理も行われます。
保守・保全管理
装置や工具などの設備の定期保全・予防保全行う機能です。常に可用性を確保できるように、スケジュールを作成し実行します。
作業のスケジューリング
生産計画を基に、製造工程や設備などの詳細なスケジュールを立案する機能です。勤務シフトにも対応しています。
品質管理
リアルタイムでデータの収集・測定・分析を行い、適正な品質管理を行う機能です。検査業務の管理などに必要となります。
差立・製造指示
仕様変更などの情報を共有し、作業工程の最適な順序を決定、作業者に対して指示する機能です。受注オーダー、バッチ、など案件単位や工程単位ごとに作業を開始します。工程内仕掛量を調整する機能を提供する製品もあります。
作業者管理
作業者の作業状況を把握し、監視・管理する機能です。最適な割当を行うことができます。
データ収集
各工程の進捗状況を把握するために、いつ、だれが、何をやったかという情報を収集・分析する機能です。
プロセス管理
生産状況を把握し、作業者の判断・意思決定を支援する機能です。高度なプロセス制御を実行したり、異常時に即座に対応しアラートを発したりできるよう、常に把握する必要があります。
製品の追跡と体系管理
仕掛品の追跡や次の作業を把握する機能です。
実績分析
過去の履歴や計画などの実績データを蓄積し、比較や分析を行う機能です。レポート作成や進捗管理、出荷予測などの業務においても必要な機能であり、比較や分析を行うことで品質の維持に役立てることができます。
MESがサイバー攻撃を受けたらどうなる?
MESを導入することで、リアルタイムで作業状況や在庫といった各工程の状況を把握でき、工場内における無駄を削減した、適切な生産が行えます。また、製造工程で必要な情報を蓄積しシステム化することにより、熟練技術者の知識やノウハウを工場全体で共有することも可能です。このようにスマート工場化において非常に重要な役割を果たしているMESですが、ネットワークに接続されており、サイバー攻撃されるリスクに注意しなければなりません。
MESがサイバー攻撃を受け、データの数値や指示内容を変えられてしまえば、製造工程や製品の品質は大幅に変わってしまうリスクもあるのです。生産資源の内容や図面、レシピや仕様書などの情報が流出する危険性も充分に考えられます。
どのようにリスク回避すべきか
MES機能がある生産管理システム製品は、セキュリティ対策がされているものがほとんどです。しかし、ネットワークでつながっていることもあり、侵入口はほかにも考えられます。まず、しっかりと現状を把握することが大切です。
現状の制御システムやセキュリティ対策が適切かを確認しましょう。その後、リスクを検討・洗い出します。工場内でもっとも守るべき優先順位を明確にし、それらを防ぐための詳細なルールを決めましょう。
決めるだけではなく、そのルールがきちんと有効的に機能するのか、スムーズに運用できるのか、を実際に見極める必要があります。問題が発生したらそれらを改善し、万が一のときに、スピーディーに対応できる体制を準備しておくことが大切です。
MESは、スマート工場化を進めるうえで重要な要素の一つであり、製造業が抱えるさまざまな問題を解消し得るシステムです。一方で外部のネットワークとつながることにより、サイバー攻撃のリスクが発生することも注視しなければなりません。工場の生産工程に影響を及ぼさないように、しっかりとしたセキュリティ対策を行うことが重要です。