スマート工場化が進む中リスク対策はどのように進めればよいのか
国が進める「働き方改革」が広く知られるようになり、新型コロナウイルスの世界的流行などもあって、労働環境はさまざまな変化を見せています。そんな中、製造業において注目されているのが「スマート工場(スマートファクトリー)」で、導入する企業も増えています。今回は、スマート工場の基本的な知識やリスク対策などについて解説します。
製造業の現場で注目されるスマート工場とは
時代背景や世界情勢にともなう労働環境の変化は、長い間日本を代表する産業の一つとして経済を支えてきた製造業も例外ではありません。また、技術者の高齢化や海外メーカーの躍進など、多くの課題があるのも事実です。従来の工場では、熟練の技術者や高度な技術を持つ担当者、経験豊富な管理担当者など、手作業による運営が一般的でした。
しかし、そのような工場運営では生産性の向上にも限界があり、慢性的な人手不足や技術者の高齢化、技術力の継承問題などもあります。また、機械の故障やトラブルの検知などの対応の柔軟性にも欠けてしまいます。
このような課題を解決しようと多くの企業が注目しているのが「スマート工場化」です。「スマート工場」とは、コンピュータを介して各地の既存、または新規の工場と、生産ラインや製造機械といった設備をネットワークで接続し、生産性の最適化や効率化、情報管理の効率化を図ることを指します。AIやIoTなどの先進技術を導入し、スマート工場を実現することで、製品の品質や状態の安定化が図れ、さまざまな設備や人の稼働状況が最適化できます。
コストも削減でき、無駄のない効率的な生産を行うことができます。IoTは「モノのインターネット」といわれ、あらゆるモノをインターネットで接続することで、データ収集や分析、遠隔操作や制御などが可能となります。AIは「人工知能」といわれるもので、収集されたデータを処理・分析し、自動化できるようになります。両者ともスマート工場化には欠かせない技術です。
工場へサイバー攻撃するとどうなる?
スマート工場化を進めるうえで、ネットワークへの接続は必須であり、デジタル技術の活用は不可欠です。従来の工場では、その一方で外部との通信などが増えたこともあり、サイバー攻撃の標的になりやすく、常にそのリスクにさらされています。
製品の素材や構想、製造方法や生産状況など、あらゆるデータが盗まれる危険性があるということです。また、ネットワークが攻撃されることによって、データや生産システムを破壊されたり、操作されたりする可能性もあります。
スマート工場がそういった被害を受けた場合は、機器の故障や工場の操業停止など、重大な事態になることが予想され、多大な損失が生じることにもなりかねません。品質の安定性が保たれないことで、健康や安全に関するリスクも考えられます。
会社や商品の品質を守るにはリスク対策が必須
さまざまなリスクがありますが、サイバー攻撃から会社や商品の品質を守るための、具体的なセキュリティ対策をみていきましょう。
現状把握
まずは、既存のセキュリティルールを、制御システムごとに確認しましょう。それぞれの制御システムでルールにバラツキがある、ルールが定められていない、などの状態では、対策が不充分な制御システムが侵入口となってしまうことがあり、ほかのシステムまで被害が広がる可能性があります。運用の状態や効果も含め、しっかりと確認することが必要です。
リスク分析
現状の把握ができたら、リスクの分析を行います。工場の制御システムのセキュリティ対策において守るべき項目を考え、優先順位を明確にします。製造業では「安全性」「継続的な工場稼働」「品質」となるでしょう。これらを妨げる要因がないか、リスクを顕在化させていきます。
ルール策定
リスク分析が完了したら、ルールの策定を行います。詳細なセキュリティルールを策定することも大事ですが、実行する現場担当者の作業が増えてしまうと負担になるうえ、製造コストの上昇にもつながります。継続的に運用するためにも、現場担当者と充分に話し合い理解を得たうえで、無理のないルールを策定しましょう。
運用
最後に策定したセキュリティルールがスムーズに適用できるか、実際に運用します。何らかの攻撃などがあった場合、速やかに対応できるようになれば、セキュリティ対策として有効といえるでしょう。実際に運用のうえで発生する問題点等を、現場からヒアリングできる体制を構築しておくことも重要となります。
生産効率の向上や品質の安定、情報の管理など、大きな期待を持ってスマート工場化を進めている会社が数多くあります。しかし、ネットワークで外部とつながることによりさまざまなリスクが発生することも事実です。一般のオフィスとはセキュリティ対策が異なるため、工場運営に合わせたセキュリティ対策を行うことが大切です。