製造業で力を示してきた日本も、世界がこぞって取り入れるITの技術によってさらなる変革が求められています。とくに生産現場では、緻密な計画を立てて、コストを抑えつつ、品質の高い製品を作ることが必要になりました。その必要にかなうのが製造実行システム（MES)です。こちらでは、このシステムの主要な機能と役割についてご説明します。

現場で使用される物品を管理する機能

製造実行システム（MES)で、製造業の現場で使われる物品類を管理する機能は4つあります。その一つが「生産資源の配分と監視」です。これは、製品を作る作業に必要な資材、技能、工具、設備、指示書などの文書を管理します。このことには、生産資源に関するデータをリアルタイムに把握・表示し、製造に関わるすべての工程をこなすために必要な資源を適切に割り当てる機能も含まれます。

さらに「仕様・文書管理」では、製品を作るための段取りややるべきことの優先順位などを、時間や設備への負荷なども考えて計算し、スケジューリングしていきます。こちらには代替作業や工程、並行してできる作業などもスケジューリングされます。

また、「製品品質管理」では製造現場からデータをリアルタイムに収集して分析し、問題点や懸念される点を特定できます。こちらでは、症状とその原因に加え対策と結果を関連付けて提示するので、取るべき行動がわかりやすいのが利点です。そして、顧客向けの品質記録をつけることも可能です。

そして、「設備の保守・保全管理」では設備や工具を問題なく利用できるよう、定期点検や予防のための保全スケジュールを立てられます。さらに、突如発生した問題に対しても警告を出し、何が原因で問題が起きているのかを過去のでき事や履歴から理解できるよう記録の保管を行い、問題解決をサポートすることもできます。

生産現場で働く人を管理する機能

製造実行システム（MES)にて製造の現場で働く作業員を管理する機能は、3つにわかれます。まず一つとして、「作業のスケジューリング」があります。製造工程別の優先順位や特徴などに合わせて、作業の順序を決定できますが、こちらには最短の時間で行程が終了するように段取りすることも含まれています。また、生産能力が限られている現場では、代替作業や並行して行える作業なども加味して、作業にかかる正確な時間や設備などへの負荷なども計算して決定していきます。さらに、交代制の勤務シフトが組まれる現場の対応も可能です。

続いて「作業手配・製造指示」機能では、それぞれの製造現場や工程を、ジョブやロット、作業オーダーなどの形式で管理でき、現場の作業内容や目標がわかりやすく表示できるようになっています。刻々と変化する現場の状況に合わせて、作業手順の手直しをすることもでき、各工程のバッファーを考えたうえで、仕掛けの量を調整することもできます。加えて、工場内の物流管理も担います。

そして、「作業者管理」では、各工程での作業者の作業時間や作業している場所などをリアルタイムで把握し、最適な作業割り当てを支援します。これには、材料の払い出しや、製造にダイレクトに関係しない間接作業などを追跡することも含まれ、活動基準原価計算のデータに反映することもできます。

生産現場全体を管理しサポートする機能

生産現場では、人と物の管理のほかに全体をオーバービューで管理することが必要になりますが、製造実行システム（MES)では、そのことに資する4つの機能が付けられています。

その一つが、「データ収集」です。こちらでは、生産工程や生産単位ごとのデータを製造装置から自動的にとり、分単位など細かいスパンの情報を収集できます。また、最近ではスマートフォンやタブレットなどが生産現場に取り入れられ、今までは得られなかったデータを手動で収集することもできるようになりました。

また、「プロセス管理」では、生産現場の状況を監視して、個別の工程や工程間のつながりなどで必要な修正や改善を自動的に行うことができます。これには、アラートを出す機能も付いているので、作業者自身が実施している活動を修正したり改善する意思決定をサポートすることが可能になっています。

加えて、「製品の追跡と製品体系管理」機能では、製品に関係するすべての情報がリアルタイムでわかるようになっています。たとえば、この工程ではだれが作業していて、仕掛品はどこに置かれているか、警告の有無や手直しなどの発生状況などで、次にどんなアクションを起こしたらより生産性を上げられるかが理解できます。

そして、「実績分析」機能では、現状の生産実績を過去の履歴や目標値と比較して報告することが可能になります。グラフ化する機能もあるので、視覚的に生産現場を分析できます。

製造実行システム（MES)の機能は主に3つに分けられます。その一つが、現場で使用される物品の管理に関するものです。また、生産現場で働く人を的確に管理するための機能もあります。加えて、生産現場全体を俯瞰して管理・分析・サポートする機能もついているので、作業の効率化が期待できるのです。